映画評・書評・その他日常について

映画や書籍についてのブログです。
映画を観て・本を読んで、何を思ったのか?についての覚書です。
また、家事や旅行が好きです。
何気ない毎日の中の出来事についての覚書でもあります。

BEFORE SUNRISE 恋人までの距離

ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 [DVD]
ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ
2010-04-21
DVD


ヨーロッパを縦断する列車の中で偶然出会い、偶然に話し始めたアメリカ人のジェシーとフランス人のセリーヌは、ジェシーがアメリカに戻り、セリーヌがパリに戻るまでのたった一日の中で、ウイーンで列車を降り、ウイーンの街を二人で歩きながら、次々と浮かんでは消えていく自分の中の出来事を、本当に自然に、本当に安心して、お互いにさらけ出していく。


お互いに異性として相手に強烈に魅かれながらも、それだけではなく、どうしようもなく魂が惹かれ合っているのを感じている。その為、話す内容は、異様に深い。おそらく初対面の人との会話では一般的には避けられるだろうタブーは完全に無視されている。ただ、魂が求めるままに、その場その場でお互いがお互いを確認し合っていく。


途中、二人には静かな葛藤がある。

お互いがお互いにとって特別な存在である、と気づきながらも、アメリカとパリに暮らす二人に幸せな未来があると確信できない。男性であるジェシーは、二人の関係に前向きな発言を繰り返す。しかし、女性であるセリーヌは、一日だけの関係と、強がりをみせる。


それは、女性特有の心理なのかもしれない。

二週間前にスペイン留学中の恋人と別れたばかりでヨーロッパを傷心旅行(?)していたジェシーの、今日出会ったばかりの自分への思いに確信が持てないとか、たとえ、このジェシーとの出会いを人生における特別なものとしなくても自分の人生にはこの先もっともっと素敵な出会いがあるに違いないという思い。もっと自立した女性になりたいという気持ちを持っているのに、恋が成立すれば、離れた場所で暮らすジェシーに対して抱く恋心によって、愚かな女々しい女性としての自分に直面するのではないかという恐れ…おそらくそんな様々な思いから、強がりを見せて、わたしたちにあるのは一日だけでいいじゃない?と提案する。しかしながら、その提案がジェシーによって受け入れられると、どうしようもない悲しみに襲われてしまう。


二人は、その後も、”これから”をどうするか?で静かに葛藤し悩む。

結局、パリ行きの列車にセリーヌを送って行ったジェシーが、また会おう!という言葉をセリーヌにかけることで、二人の心は幸せに満ちる。半年後の昨日、この時間にこのホームで会おう。そう約束して、二人は別れた。電話番号や住所の交換はしないままで。


この映画は、この後、『Before Sunset』『Before Midnight』と続き、こちらは一度も観たことがないまま自宅にDVDがあるので、近いうちに観てみたいと思っています。


その人といるだけで、その人の話を聞くだけで、その人に話すだけでどうしようもなく他の人とは違う安心感や満足感を得ることができる人は、この世の中にいる。


途中、セリーヌが、もし神様がいるのだとしたら、それは人と人との間にいると思う、という話をしている。魔法があるのだとしたら、例え分かり合えないとしても、相手を分かりたいという思いを持ち続けることが魔法ではないかと。


セリーヌの中では、おそらく、多くの人とは分かり合えないという前提がある。だからこそ、話されている神様や魔法、そしておそらくは愛の意味がとても深く重く、私に響いてくる。


セリーヌが自分自身を老婆とイメージするという一方で、13歳の少年として自分をイメージするジェシーは、良き夫良き父になることを大切に思うという一方で、仕事で何かを成し遂げたいという思いを語る。そして、その二つは、ジェシーの中では当然のように両立されないものとして語られる。


聡明なセリーヌは、そういうジェシーの感覚を隅々から読み取って、自分に対して抱いているだろう思いの確かさを感じながらも、一方で、自分との”愛”だけに生きようとする言葉を使っていながら、もう一方で、自分の人生を決めかねているジェシーが持つ若さの残酷さも気づいているはずだと思った。


二人それぞれが自分の人生を大きく決めかねているうちは、おそらくどれだけ惹かれあったとしても、上手に一緒に生きていくことは難しいのだろうという気がした。

ただし、これは、現在の私の感覚。
真実は分からないし、もっと私が成長すれば、二人の人生の解決策を思いつくかもしれない。20年ぶりに観ても、やっぱり、どうしようもなく心惹かれる映画だった。


ここでは恋愛が大きなテーマでもあるけれど、私の中では、おそらくは恋愛映画ではない『ジェイン・オースティンの読書会』という映画と同類のものとして位置付けられている。人と人との関係を描いた中で、今の私が特に心惹かれる要素が詰め込まれている。私も、そういう関係を築いていきたい。本当に、そういう人生を生きたい。


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